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2010年9月27日 (月)

思い出の味は永遠に・・・

21歳、社会人1年目の私が挫折したお菓子職人への道。それは『ルコント』というフランス菓子店でのことでした。

高校を卒業し、バイトも解禁となり、ケーキ屋さんでの販売のアルバイトを探していた時に見つけたケーキがたくさん並んだ写真に惹かれて応募したのは、偶然にも、その頃は日本でも稀有な存在の、本格的なフランス菓子を出すお店でした。直前に応募していた渋谷のケーキ屋さんからなかなか返事が来なかったのも、何かの運命だったのかもしれません。それがなければ、このご縁はなかったのです。面接を経て、すぐに採用が決定しました。短大から数駅のの青山一丁目のお店を希望していたのですが、六本木店の人が足りないことが理由で、六本木店でのアルバイトがスタートしました。時は1990年。バブルの絶頂です。お菓子屋さんも、やはり景気がよい時代というのはとても華やかでした。

六本木のお店は、ルコント最初のお店でした。創業の頃の六本木は、その当時よりも華やかだったことでしょう。ルコントの六本木店は、間口がとても狭くて、小さなスペースにぎっしりとお菓子が詰め込まれていました。お店の床のタイルにお花のレリーフがあったりするのを覚えています。小さなお菓子屋さんでしたが、やっぱり特別でした。お客様が開店当時からやムッシュがオークラにいた頃からのお得意様だったり、フランス通だったり、このお店への思い入れがすごく強い方達ばかりで、そういうお客様との会話から、少しずつルコントのことを知ることができたのは幸運でした。私も、お店に対して、そしてルコントのお菓子に対して、どんどん愛着が湧いてきました。今でも、働きながら、食べ倒したルコントのお菓子が、私のフランス菓子の味の基準になっています。

その頃、ルコントは青山のキッチンと三田のキッチンと2つの厨房がありました。六本木のお店は、どちらのキッチンからもお菓子が送られてくる店舗で、昔ながらのルコントの味を守るシェフと、今のフランスの空気をどんどん取り入れるシェフの競演も、密かに楽しみにしていました。ちょうどティラミスがブームになっていた時で、お客様からの要望も高くて、でもあれはイタリアのデザート菓子だからフランス菓子じゃないから、そのままのネーミングでは出せない・・・けど、同じマスカルポーネやコーヒーを使った構成のお菓子を・・・みたいな工夫もあったなぁって思い出します。販売してた私にとっては、ティラミスでいいじゃん。って思いましたが、フランス菓子を誇る店にとっては、それじゃいけないんですよね。今なら理解できるし、フランス菓子店にティラミスを求めに来るお客様も少ないんじゃないかと思います。時代だぁ。華やかな時代ですから、お菓子の新作もドバドバ出ていました。販売として、だんだんお菓子も覚えてきた私にとっては、新作の登場も楽しみだし、それをお客様にオススメするのも楽しい仕事でした。

青山のキッチンから、さほど遠くない六本木のお店は、夜遅くまで開いてることもあり、ルコントのキッチンのお菓子職人さん達がお店の様子を見にいらっしゃることがちょくちょくありました。だんだん顔見知りになってくると、いろいろとお菓子の話を聞いたり、キッチンの様子を聞いたりするのが楽しみになってきて、いつのまにか、私もそこで働けるかなぁと淡い夢を抱くようになっていました。

短大でも2年生になると就職活動が始まります。バブル期最後の華の時代。余りにも今の人達と違う状況でしたが、仕事観も今とは違って、良妻賢母の教えが濃厚な大妻の短大では、一流企業のOLをやって2-3年して結婚退職するのが幸せ♪でした。まぁ、そんな中でも私はちょっと異色だったもので、OLとか・・・やっぱり無理!という結論で、ずっと子供の頃から好きだったお菓子の世界に飛び込んでみようかなぁと思ったのです。

この決定を下した夜は、不思議な白昼夢のようなものをみました。布団の中で将来のことを一人モンモンと考えていて、ルコントの製造で採用してもらうことをイメージした時に、何かわからないけど、暗闇の向こうの方の小さな扉がギィッと開いて、光が見えたような気がしました。

今から考えると、特に経験も、専門学校も出ていない女子が、アルバイトしていたってだけで、ルコントの製造に採用されるなんて夢のようです。その2年前までは、男子しか採用されなかったのですが、時代がバブルで人材不足だったことや、当時のアルバイト先の店長さんが取り計らってくださったお蔭で、ルコントの製造に就職することができたことは奇跡だったんだなぁと思います。

結局は1年で挫折してしまったわけですが、ルコントで1年だけでもその現場にいられたことは、私にとって、とても大きな財産になりました。挫折してしまいましたが、そんなに辛かったわけではなく、いろんな人にすごくかわいがってもらいました。つい先日、OB会にちらっと参加させて頂き、懐かしい方と会うことができて、たくさんのことを思い出して、感謝の気持ちが改めてあふれ出てきました。

そんな私にとって、大切なお菓子の仕事への一歩目となるステップだったルコントが、昨日、閉店を迎えました。それまで日本になかった本当のフランス菓子を出すお店を開き、一時代を築き、そして、自分の手でその歴史に終止符を打つ。きっといろいろな思いはあると思うのですが、そのマダムの決心に、私は将来学ぶべき時が来るんだろうと思います。お菓子職人として挫折はしましたが、形は違っても、お菓子の仕事に関わることができて、今、こうしてお店を持てていることは、いろんな幸運の積み重ねです。偉大なお店の歴史に少しでも関わることができて、幸せでした。ルコントの思い出の味は、私の中で大事に大事にとっておこうと思います。ありがとうございました。

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